10年テナント退去危機:建物賃貸借更新拒絶の正当事由実務判例

10年入居したテナントの退去問題と、建物賃貸借における更新拒絶の正当事由を解説する実務判例イメージ

繁華街歩いてると、めちゃくちゃ古いテナント、よく見かけませんか?

「創業40年」とか「昭和から営業」とか。

大家さんからすると、「そろそろ出て行ってほしい」って思うこともある。建て替えたいとか、自分で使いたいとか。

でも、普通の賃貸借契約だと、更新拒絶するのマジで難しい。

借地借家法28条で「正当事由」が必要なんですけど、これがめちゃくちゃ厳しい。

実務だと、大家側が勝てる確率、20〜30%程度らしいです。

逆に言うと、テナント側が7〜8割勝つ。

「契約期間が満了したら出て行ってもらえる」って思ってる大家さん多いんですけど、それ勘違い。普通借家契約は、正当事由なしだと更新拒絶できない。

じゃあ、どうすれば更新拒絶できるのか?

実務で使われてる「正当事由5要件」と、実際の判例を見ていきます。

正当事由判定の5要件チェック表

更新拒絶が認められるかどうか、実務では5つの要件で判断します。

要件賃貸人事情賃借人事情建物状況立退料目安
大家使用必要★★★★★賃料12ヶ月分
修繕必要性★★★★★★★★★賃料6ヶ月分
賃料滞納★★★★不要
建物老朽化★★★★★★★★賃料6〜12ヶ月分
立地再開発★★★★★★★★賃料12〜24ヶ月分

重要なポイント

この5要件、全部揃える必要はない。

でも、1つだけじゃ弱い。

実務でよくあるのが、「修繕必要性+立退料」のセット。

耐震補強が必要な建物だと、これだけで正当事由認められることが多い。

逆に、「大家が使いたい」だけだと、立退料相当額(賃料12ヶ月分以上)払わないと厳しい。

賃料滞納があると、これが最強カード。立退料なしで更新拒絶できる。

私が実務で確認するときは、まず賃料滞納歴をチェックします。

滞納が3ヶ月以上続いてたら、それだけで正当事由になる可能性高い。

次に、建物状況。耐震診断書があれば、鉄板。

最後に、立退料の相場を調べる。近隣の同条件物件の賃料×12ヶ月が目安。

この3つ揃えば、勝てる確率が一気に上がります。

判例事例①:大家娘同居目的(東京地裁)

実際の判例見てみましょう。

事例の概要

大家さんが所有する倉庫を、10年間賃貸してた。

娘さんが結婚して、「住む場所がない」って言ってきた。

大家さんは、倉庫をリノベーションして娘夫婦に住まわせたいと思った。

賃借人に更新拒絶を通知。立退料100万円(賃料1年分)を提示。

賃借人は「倉庫なんて他にいくらでもある」って反論したけど、裁判所は大家側の主張を認めた。

判決のポイント

  1. 賃貸人の使用必要性が高い:娘夫婦の居住は切実な事情
  2. 立退料が相当額:賃料1年分は妥当
  3. 賃借人の代替性:倉庫は他でも見つかる

裁判所は、「大家の家族が住む」っていうのは、正当事由として強めに評価してる。

商業用途だと、「他でも借りられる」って判断されやすい。

実務教訓

私がこの判例から学んだのは、家族居住は正当事由として強いってこと。

ただし、立退料は必須賃料1年分が最低ライン。

あと、賃借人の代替性も重要。

倉庫とか駐車場みたいな汎用性高い用途だと、「他でも借りられる」って言われる。

逆に、特殊な設備が必要な店舗だと、代替性が低いから正当事由認められにくい。

判例事例②:賃料滞納文化施設(神戸地裁H28)

次は、賃料滞納のケース。

事例の概要

神戸市が所有する建物を、文化施設として貸してた。

この施設、賃料滞納が常習化してた。

3ヶ月滞納→支払い→また3ヶ月滞納、みたいなのを繰り返してた。

神戸市は、「このままじゃ公共財産の管理が適正にできない」って判断して、更新拒絶を通知。

立退料は提示せず。

賃借人は「文化施設として地域に貢献してる」って反論したけど、裁判所は神戸市側の主張を認めた。

判決のポイント

  1. 常習的な賃料滞納:信頼関係破壊の法理
  2. 立退料不要:滞納が理由だから
  3. 賃借人の事情は考慮されない:公共性があっても滞納はダメ

賃料滞納が常習化してると、それだけで正当事由になる。

しかも、立退料なしで更新拒絶できる。

実務教訓

この判例、めちゃくちゃ重要。

私が管理会社から相談受けるとき、まず「滞納歴ありますか?」って聞く。

3ヶ月以上の滞納が1回でもあれば、それを記録しておく。

滞納が繰り返されてたら、もう正当事由確定。

立退料も不要だから、大家さんの負担がゼロ。

ただし、注意点がある。

滞納があっても、大家側が督促せずに放置してたら、「黙認した」って判断されることもある。

滞納したら即座に督促状を送る。これ必須。

判例事例③:老朽木造アパート耐震補強(東京地裁R1)

最後は、耐震補強のケース。

事例の概要

大家さんが所有する木造アパート、築40年。

耐震診断したら、「震度6で倒壊の可能性」って結果が出た。

耐震補強工事に300万円かかる。

でも、賃借人が住んでる状態だと工事できない。

大家さんは、賃借人に更新拒絶を通知。立退料42万円(賃料6ヶ月分)を提示。

賃借人は「引越し先が見つからない」って反論したけど、裁判所は大家側の主張を認めた。

判決のポイント

  1. 建物の安全性:耐震補強は公共の利益
  2. 修繕必要性が高い:賃借人居住中は工事不可
  3. 立退料が相当額:賃料6ヶ月分で妥当

耐震補強が必要な建物だと、正当事由が認められやすい。

公共の安全に関わるから。

立退料も、賃料6ヶ月分で十分って判断された。

実務教訓

この判例、現場でめちゃくちゃ使える。

私が大家さんから「更新拒絶したい」って相談受けたら、まず耐震診断を勧める

診断費用は10〜20万円くらいだけど、これで正当事由が確定するなら安い。

診断結果が「耐震性不足」だったら、それを根拠に更新拒絶通知を出す。

立退料は賃料6ヶ月分が相場。

ただし、賃借人が高齢者だったり、病気療養中だったりすると、立退料を増額しないといけないこともある。

この辺は個別判断。

実務テンプレート:更新拒絶通知書

実務で使える更新拒絶通知書のテンプレート、載せておきます。

【件名】建物賃貸借契約更新拒絶通知書

令和○年○月○日

賃借人 ○○ ○○ 殿

賃貸人 ○○ ○○
住所:○○県○○市○○
連絡先:090-XXXX-XXXX

【通知内容】

下記物件の賃貸借契約につき、借地借家法第28条に基づき、契約期間満了時の更新を拒絶いたします。

【物件住所】
○○県○○市○○ ○丁目○番○号

【契約期間満了日】
令和○年○月○日

【正当事由】

  1. 耐震補強工事実施の必要性
    別紙耐震診断書の通り、本建物は耐震性不足と診断されました。
    賃借人居住中は工事実施が不可能なため、契約更新を拒絶いたします。
  2. 立退料の提示
    立退料として金420,000円(賃料6ヶ月分相当)をお支払いいたします。

【添付書類】

  • 耐震診断書(令和○年○月○日実施)

【今後の流れ】

契約期間満了日(令和○年○月○日)までに、物件の明け渡しをお願いいたします。

立退料のお支払いは、明け渡し確認後、7日以内に指定口座へお振込みいたします。

ご不明点がございましたら、下記連絡先までお問い合わせください。

以上


使い方のポイント

  • 契約期間満了の6ヶ月前までに送る(借地借家法26条)
  • 内容証明郵便で送る(証拠残す)
  • 耐震診断書など、根拠資料を必ず添付
  • 立退料は具体的な金額を提示

これ、実務でそのまま使えます。

私が大家さんにアドバイスするときは、このテンプレートをベースに、個別事情を追加してます。

宅建士が現場で確認すべき5項目

更新拒絶の相談を受けたとき、私が必ずチェックするのがこの5項目。

□ 賃貸借期間(10年以上は正当事由弱まる)

長期テナントほど、正当事由のハードルが上がる。

10年以上住んでる賃借人だと、「生活基盤が確立してる」って判断されるから。

逆に、3年未満だと、「まだ代替性がある」って判断されやすい。

□ 賃料滞納歴(管理会社にヒアリング)

滞納歴があるかどうか、これ最優先でチェック。

管理会社に「過去3年分の賃料支払い状況を教えてください」って聞く。

1回でも3ヶ月以上の滞納があれば、それを記録。

滞納が常習化してたら、もう正当事由確定。

□ 建物状況(耐震診断書入手)

建物が古い場合、耐震診断を勧める。

診断費用は10〜20万円だけど、これで正当事由が確定するなら安い。

診断結果が「耐震性不足」だったら、鉄板。

□ 近隣相場(立退料算定用)

立退料の相場を調べる。

同じエリアの同条件物件の賃料×6〜12ヶ月が目安。

SUUMO、ホームズで検索して、平均賃料を出す。

これをベースに立退料を算定。

□ 賃借人事情(家族構成・事業状況)

賃借人の事情もヒアリング。

高齢者、病気療養中、子供の学校、事業継続中…

こういう事情があると、立退料を増額しないといけない。

逆に、単身者で転勤可能な職業だと、代替性が高いから立退料安め。

この5項目、全部チェックしてから、「更新拒絶できるかどうか」を判断します。

まとめ:勝てる更新拒絶の3原則

更新拒絶、実務で成功させるには3つの原則があります。

1. 正当事由を複数組み合わせる

1つだけじゃ弱い。

「耐震補強が必要+立退料提示」みたいに、複数の理由を組み合わせる。

賃料滞納があれば、それだけで十分だけど、それ以外のケースは複数必須。

2. 立退料は相場12ヶ月分以上

ケチると負ける。

賃料12ヶ月分が最低ライン。

耐震補強が理由なら、6ヶ月分でもいけることもあるけど、基本は12ヶ月分。

高齢者とか、特殊事情がある賃借人だと、24ヶ月分になることもある。

3. 早めの通知(満了6ヶ月前)

借地借家法26条で、契約期間満了の6ヶ月前までに通知が必要。

これ守らないと、そもそも更新拒絶が無効になる。

私が大家さんにアドバイスするときは、「満了9ヶ月前から準備開始」って言ってます。

耐震診断とか、立退料の算定とか、時間かかるから。

この3原則、守れば勝率は7割以上になります。

逆に、どれか1つでも欠けてたら、負ける可能性高い。

更新拒絶、甘く見ちゃダメ。

ちゃんと準備して、正当事由を固めてから動く。

これが鉄則。

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※この記事は宅建士(2024年合格)が行政書士の勉強と実務ヒアリングをもとにまとめた内容です。個別案件は弁護士・司法書士にご相談ください。


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